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第151話 目標は一度捨てます

Author: 八月 猫
last update publish date: 2026-10-06 09:00:32

 現地視察から数日後。

 東都アセットとの打ち合わせが、もう一度開かれた。

 今回は前回より人数が少ない。

 宮坂さんと事業責任者、それから現地運営会社の担当者。こちらも帝人さんと私、それに必要な担当者だけだった。

 机の上には、現地視察後に追加された資料が並んでいる。

 階ごとの来館傾向。

 年代別の利用状況。

 既存テナントの継続意向。

 撤退理由。

 周辺競合との比較。

 数字は増えた。

 でも。

 帝人さんは資料を開いてしばらくしたあと、最初にこう言った。

「三年後九十二%という目標は、一度捨てる」

 東都側の空気が止まった。

 事業責任者がすぐに口を開く。

「目標値そのものを、ですか?」

「ああ。数字が悪いと言っているわけじゃない。置き方が逆だと言っている」

 帝人さんは資料の一枚を手前へ引いた。

「今の計画

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     現地視察から数日後。 東都アセットとの打ち合わせが、もう一度開かれた。 今回は前回より人数が少ない。 宮坂さんと事業責任者、それから現地運営会社の担当者。こちらも帝人さんと私、それに必要な担当者だけだった。 机の上には、現地視察後に追加された資料が並んでいる。 階ごとの来館傾向。 年代別の利用状況。 既存テナントの継続意向。 撤退理由。 周辺競合との比較。 数字は増えた。 でも。 帝人さんは資料を開いてしばらくしたあと、最初にこう言った。「三年後九十二%という目標は、一度捨てる」 東都側の空気が止まった。 事業責任者がすぐに口を開く。「目標値そのものを、ですか?」「ああ。数字が悪いと言っているわけじゃない。置き方が逆だと言っている」 帝人さんは資料の一枚を手前へ引いた。「今の計画は、三年後に稼働率九十二%まで戻すという結論が先にある。そのために既存客を維持し、若年層を呼び戻し、既存店舗も残し、新規テナントも入れることになっている。だが現地を見た限り、その全部を同時に取れる前提には無理がある」 誰も口を挟まない。 帝人さんはそのまま続けた。「一階は日常利用で機能している。上階は目的がなければ人が上がらない。若年層は施設全体から完全に消えているわけではなく、一階だけ使って帰る客もいる。既存店舗についても、残してほしいという声がある店ほど、再開発後の条件では残れない可能性がある。一方で、長く営業しているだけで将来も残す理由があるとは限らない」 私は隣で聞きながら、数日前に現地で見た景色を思い出していた。 賑わう一階。 静かな二階。 空いた区画。 残してほしいと言われながら、賃料次第では撤退する店。 長く続いているのに、客がほとんど入らない店。 資料の中では一つの施設だったものが、実際にはいくつもの違う状態に分

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